■天蓬元帥月間・三週目
※使用お題
 A=恋愛お題ったー
 B=3つの言葉を使って文章を作ってください
 C=ついのべ三題ったー
※140文字縛り。



▼10/21
◎A:深夜の映画館/ゆるす/スーツ 【捲天/現パロ】

 ミッドナイトショーを見に来た。彼とは映画館前で待ち合わせしているのだがまだ来ない。上映が始まってしまうので仕方なく先に映画館に入る。一人で座席に座り、映画が始まるのを待っていると、肩を叩かれた。振り向くと仕事帰りのスーツ姿のままの彼。僕はその手に手を重ねて微笑で彼の遅刻を許した。




◎B:「早起き」「嫉妬」「青空」 【捲天】

 朝、部屋に行ったらアイツがいなかった。どうやら早起きして下界へ行ったのらしい。次空ゲートの使用履歴を調べてアイツの行きそうな場所へ出ると、やはりそこにいた。声をかけても振り返りもしない。アイツの目は遠く広がる青空に釘付けになっている。俺の方を見て欲しい、なんて嫉妬してしまうほど。




◎C:『リスク』『変態』『アイコン』 【捲天/現パロ】

 アイツにPCのデータ整理を頼まれた。いらないと思ったら消していいですからね、と至極適当なことを言ってどこかへ行ってしまう。フォルダの中のアイコンをクリックすると、ポルノ動画が流れ始めた。言っちゃなんだがちっと変態じみてるヤツだ。こういうものを見られるリスクを考えないのかアイツは。





▼10/20
◎A:朝の川縁/ゆるす/雷 【捲天】

 雀の鳴く朝の川縁で釣り糸を垂らしているとアイツが現れた。
「軍議サボりましたね。竜王殿の雷が落ちて大変でしたよ」
「そいつぁ悪かったな」
「ところで釣れてます?」
「いんや全然」
「じゃあ許します」
 アイツは魚の餌のパン屑を寄ってくる雀にやり、俺はぼんやり釣り糸を垂らし続ける。
 ああ、平和だ。




◎C:『桜並木』『国』『耳』 【八天(捲天)/最湯記】

 あの人と一緒にお花見に来た。
「綺麗ですね」
「そうですねえ」
 それは見事な桜並木だけれども、あの人の目は桜ではなくどこか遠くを見ている。今、どこの国に居るのかも分からないかの人を想っているのは一目瞭然だ。分かっていて僕はあの人の耳元で囁く。
「今だけは、僕の方を見てもらえませんか」





▼10/19
◎A:夕方の玄関/耽る/メール 【浄天】

 夕方、帰宅するなり僕らは玄関でキスをした。絡めて吸い上げて、まるで喰らい合うようながむしゃらな行為に耽る。彼の手がベルトにかかったところでポケットに入れた携帯が鳴り響く。メールだ。
「待ってください、メールが」
「後にしろよ」
 乱暴に僕から携帯を奪うとそれを放る。壊れなきゃいいけど。




◎B:「理想」「迷子」「親切」 【捲天/現パロ】

 彼が待ち合わせに遅れて来た。滅多にないことだ。どうしたのかと聞けば、
「迷子のガキがいたから親を探してた」
 親切なことだ。僕は嬉しくて笑う。
「何がおかしいんだよ。俺が人助けしちゃいけないってのか」
「そうじゃないです。やっぱり貴方って僕の理想の人だなって」
 彼は不思議そうな顔をする。




◎C:『女』『変態』『人肌』 【捲天】

 そろそろ人肌恋しい季節になってきた。女を引っ掛けるのは簡単だけれど、俺はコイツの体温が一番好きだ。今まで抱いた女みたいに熱すぎず冷たすぎない、馴染むような肌の温度。
「で、僕を裸に剥いたと思ったら抱き枕にして寝るだけですか」
「悪い?」
「悪かありませんけど、ちょっと変態じみてますよ」





▼10/18
◎A:夜の動物園/抱く/指輪 【捲天/現パロ/♀天蓬】

 動物園ももう閉園時間になる。アイツは最後に土産売り場で買った大きなライオンのぬいぐるみを嬉しそうに抱いている。
「今日は楽しかったです」
 こんなに上機嫌な顔を見せるなんて、この前指輪をやった時以来かもしれない。
「やっぱり爬虫類館はいいですよねえ」
 俺はコイツの趣味が時々分からない。




◎B:「才能」「図書室」「反省」 【浄天/学パロ】

 図書室へ入るとセンセに出くわした。
「反省文は書き終わりましたか」
「これから書くとこ」
 口の中で飴を転がす。
「貴方は嘘をつく才能がありませんねえ」
 そのまま本を抱えて図書室を出ていこうとするので思わず腕を掴んで引きとめた。
「どうしました?」
 どうしよう。何て言えばアンタを引きとめられる?




◎C:『虹』『保護色』『布地』 【捲天】

 下界で虹を眺めていると、彼がゲートを開けて現れた。僕の行き先なんて毎回よく突き止めるものだと思う。彼は黙って僕の背後の方に立つと、煙草に火を点けたようだった。肩越しに振り返ってみる。こうしていると軍服の黒い布地が保護色のように僕の影に溶け込んで、まるで彼が僕の影になったみたいだ。





▼10/17
◎A:昼のホテル/始める/林檎 【捲天/現パロ】

 せっかく昼からホテルにしけ込んだというのに、アイツはノートPCなんか開いて原稿を書き始めた。
「な、そういうの後にしねえ?」
 顔を覗き込むと同時に目に入る林檎のマークが憎らしい。
「あと少しなんです」
 ぼんやりとディスプレイの明かりで下から照らされる真剣な顔。俺は黙して煙草に火を点ける。




◎B:「病院」「イラスト」「希望」 【捲天/現パロ】

 彼が戦地で怪我をしたと聞いて、入院している病院を訪れた。設備はお世辞に言ってもお粗末で整っているとは言えないが、病室には希望に満ちた子供たちが描いたのだろうイラストが飾られている。
「よお」
 彼は煙草を燻らせながらそう言った。その顔が相変わらずだったので、僕は彼の顔を叩いてやった。




◎C:『カマキリ』『群れ』『白昼夢』 【捲天】

 執務中に転寝をしたら夢を見た。カマキリの群れが途切れることなく、ひたすら背筋を横断していくというものだ。
「……って夢です。夢判断にでもかけたら、なんか面白い結果出ませんかね」
「なあ、お前そんな白昼夢見るなんて疲れてるんじゃねえの?」
 そういえばこのところ、彼の腕の中で寝ていない。




◎A:夕方の劇場/髪を撫でる/運命 【捲天/現パロ】

 アイツのたっての頼みで、今日は夕方にオペラなんぞを観に来た。シェイクスピアのハムレットだそうだ。俺はよく分からないので途中で寝てしまったが、舞台が跳ねた後、アイツは目を潤ませて「オフィーリアの運命は儚くも美しいですね」などと言っている。とりあえず髪を撫でてやったら抱きつかれた。




◎B:「表情」「タメ口」「ズキズキ」 【浄天/学パロ】

「なんでそんな不機嫌そうなの?」
 他でもない貴方のせいです。タメ口を利く唇を摘んでやると払いのけられた挙句、不敵な表情で微笑まれた。頭がズキズキ痛む。
「だからなんで貴方は真面目に宿題をやってこないんですか」
 額を押さえる。
「だってやってこなかったらセンセ怒ってくれるじゃん」
 ああもう。




C:『ペナルティ』『無差別』『速度』 【捲天】

「今日から貴方にペナルティを科そうと思います」
「なんで?」
「貴方、無差別に女性に手を出しまくってるじゃないですか」
「へえ、アンタはそういうの気にする方なんだ。意外だな」
「……さいですか」
「さいですとも。でもアンタがそう言うなら」
 唇にキス。驚くべき速度でペナルティは帳消しになった。





▼10/16
◎A:夕方のキッチン/見つめ合う/ジュース 【八天/最湯記】

 台所で夕食の支度をしていると、仮眠から目覚めたらしいあの人が現れた。
「何か飲み物もらえませんか」
 野菜ジュースを差し出す。
「酷い顔ですよ。どうしました?」
「いえね、腸をぶち撒ける夢を見たんですよ」
「奇遇ですね、僕もそんな夢見たことあります」
 奇妙な既視感。僕らは黙って見つめ合った。




◎B:「炎」「夜遊び」「イラスト」 【天蓬】

 僕は絵に描いた様な夜型人間で、夜遊びというか夜更かしが好きだ。今夜も読書のお供は熱くて濃いコーヒー。本は何度も読んでボロボロになりかけているお気に入りのSF小説。表紙のイラストの、顔に異様な刺青を入れた男の黒い眼窩、髪に暗い炎を纏っているのが好きだ。さて、夜はまだまだこれから。




◎『菜の花』『内股』『チョコケーキ』 【捲天/現パロ/♀天蓬】

 アイツは上機嫌で俺の買ってきたチョコケーキを頬張っている。こういう顔を見ると、次も買ってきてやりたいなと思う。
「熱っ」
 アイツが内股の辺りに紅茶をこぼした。俺は慌てて布巾を手に菜の花色のスカートを拭く。
「火傷してないか?」
「大丈夫です。すぐ洗濯しないと」
「おいこら、ここで脱ぐな」




◎A:夜の歩道橋/誓う/めまい 【浄天/学パロ】

 夜の歩道橋で彼と偶然出会った。近付くと漂う酒の匂い。よく見れば手には缶ビール。
「せめて人目につかないところで飲みなさい」
「はーい」
 物分かりのいい返事をしつつも、ビールを呷っている。缶を取り上げ残りを飲み干すと、彼は僕を睨んだ後にキスをしてきた。このめまいはきっとアルコールのせい。




◎B:「幻想」「現実」「詐欺」 【捲天】

 よく一目惚れして付き合い始めたはいいが、理想と現実が違って別れるという話を聞くだろう。だが逆に俺とコイツの出会いは最初からアレだったから変に幻想など抱いてはいなかったし、こんな仲になるとは思ってもみなかった。それでも様々なギャップを見るにつけ、時々詐欺じゃないかと思うことはある。




◎C:『火星』『原稿』『月』 【捲天/最湯記】

 原稿の肥やしに本を読む。今日はSF小説で、月でセックスをする際には身体をゴムのロープで縛るのだとか。これは次回作のネタに使えそうだなと思いつつ頁を繰る。人間はいつ月や火星に住めるようになるのだろうか。地球より狭いあの星でなら、彼との距離も縮まるだろうかと行き場のない想いを馳せる。





▼10/15
◎B:「真っ赤」「綺麗」「屈辱」 【捲天】

 冗談でアイツに白粉を叩いて口紅を塗ってやった。真っ赤な唇は不機嫌に曲げられている。
「何がしたいんですか貴方は」
「いや、綺麗になるかと思って。でもなんか違うんだよなあ」
「ここまでしておいて何を言うんですか」
 屈辱ですよ、とアイツは唇を乱暴に拭って俺に噛みつくようなキスをしてきた。




◎C: 『手足』『プール』『コーヒー』 【八天】

 徹夜が続いて辛い。彼に頼んで濃いコーヒーを淹れてもらう。
「大丈夫ですか」
「……もう頭も手足も重くて」
 まるでプールで泳いだ後のような眠気と疲れ。
「30分経ったら起こしますから、おやすみなさい」
 彼は言う通り30分後には殴ってでも起こしてくれると信じているから、僕は眠りの淵に落ちる。




◎A:早朝のホテル/密会する/メール 【捲天/最湯記】

 まさか家族のいる家でこういう行為に及ぶわけにはいかないから、彼と再会する時は大抵がホテルだ。家に帰るために朝早めにチェックアウトを済ませる。彼の息子から届いた『どこにいるの?』というメールを読んで、黙って携帯をしまう。さあ、何食わぬ顔で彼を迎えて帰って来たのだと見せかけないと。




◎B:「寝不足」「星空」「尊敬」 【宋公→天蓬】

 あの人は夜中に突然僕の部屋を訪れると、同室の仲間を起こさないように僕だけを連れ出した。僕は慣れない生活で寝不足の目を擦りながらついていく。
 次空ゲートを開いて下界へ降り立つと、そこには黒い天幕に無数に虫食った様な空が広がっていた。
「どうですか、星空は」
 僕が尊敬した瞬間のあの笑顔。




◎C:『合格』『包丁』『プール』 【捲天】

 アイツが料理を覚えたいというので教えてやった。包丁の扱いにも慣れてきて、合格とはいかないでも及第点だ。
「今日は何を作ります?」
 目を輝かせて俺に尋ねてくるので、俺はどうしようかとボウルのプールの中で野菜たちが浮かんでいるのに目をやる。
 困ったことに、コイツは致命的に味付けが下手だ。




◎A:夜の図書館/寝る/黒子 【捲天】

 夜の薄暗い書庫へ入ると、彼が書架に凭れて眠っていた。手には僕が好きでよく読んでいる歌集が、読みかけらしきページに指を挟んだまま。比喩じゃなくて僕らはお互い全身の黒子の数も知り尽くしているような仲だけど、彼のこんな寝顔はあまり見たことがない。少し子供っぽく見えるな、とひそり笑う。

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