■とけるとけない混ざらない




 捲簾が風邪をひいた。身体の丈夫さが売りの彼にしては珍しいことだった。

「38度」

 体温計に目をやりながら天蓬が言う。額に冷却シートを貼った捲簾はベッドの中で寝返りを打つ。

「何か食べたいものとかあります?」
「いらねえ……」
「それじゃポカリは? 水分取った方がいいですよ」
「……飲む」

 答える声はガラガラで、喉もひどく痛むのだろうなと思う。天蓬は冷蔵庫からペットボトルのポカリを取ってくると捲簾に渡す。なんとか上半身を起こそうとしている、捲簾のだるそうな動き。それを見ていられなくて、天蓬は捲簾からペットボトルを奪うと栓を開けた。一口含んで、捲簾の顎を掴み口づける。ごくんと捲簾の喉が鳴ってポカリが飲み下された。

「……もっといります?」
「馬鹿、うつるぞ」
「うつせば治るっていうじゃないですか。うつしてくださいよ」
「ありゃ迷信だろ」

 捲簾の掠れた声を聞いているのが嫌で、天蓬はさらにポカリを捲簾に口移しで飲ませる。捲簾の手が天蓬を押しのけながら、口の端から少しこぼれたのを乱暴に拭う。

「おい、あんま煽んな……」
「そんな元気あるんですか」
「今すぐお前に突っ込みてえと思うくらいには」
「いいですよ」

 天蓬はズボンと下着を脱ぐと毛布をめくってベッドに乗り上がる。寝間着代わりのスウェットから捲簾のものを取り出すと口に銜える。捲簾の言う通りにそこはもうすでに少し硬くなっていた。

「おい、天蓬……っ」
「寝ててください。勝手にやりますから」

 天蓬は捲簾のを銜えながら、性急に自分の後ろに指を突っ込んで無理矢理にかき回した。いつもなら捲簾がやってくれるので、自分でこうするのは初めてだった。全然気持ちよくないが、どうにかして解さないと受け入れることができないだろう。自棄になって指を増やし、中で広げるように動かす。

「天蓬、無理すんな……」

 捲簾が天蓬の髪に指を通す。天蓬が顔を上げると、一瞬視線が合う。眼鏡の奥の鋭い視線に捲簾は諦めて、ベッドのサイドボードを探ってゴムを天蓬に放る。天蓬は口でゴムのパッケージをちぎって開けると硬くなった捲簾のものに被せ、身体を起こして捲簾に跨った。すう、と息を吸い込み、一気に腰を落とす。

「……っ!」
「ちょ、っ!」

 天蓬が苦痛に息を飲み、まさかいきなり全体重で押し込みにかかるとは思わなかった捲簾が、中ほどまで銜え込んだ天蓬の腰を慌てて掴む。自分がこれだけキツいのだから天蓬の痛みはどれほどだろう。

「待て、焦るな、もっとゆっくり……」
「喋らないで、ください。貴方の声、聞きたくない」

 弱った貴方の声なんて。
 聞きたくない。
 天蓬は天井を仰いで口を開くと出来るだけ力を抜き、なんとか捲簾のものを収めきった。だがあまりの圧迫感に動けそうにない気がしてくる。熱のせいかいつもより熱い塊を銜え込んだ腰を叱咤して引き上げ、またゆっくりと落とす。それを何度か繰り返すと少し楽になり、天蓬の口から徐々に蕩けた喘ぎが漏れ始める。

「ホント、は、直に突っ込んで、中に出してもらって、うつして欲しいんですけど」

 風邪も熱も何もかも。
 天蓬は身体を倒して捲簾の胸に耳を当てた。捲簾が天蓬の肩をかたく抱きしめる。それでも二人は混ざり合う事ができない。ならばせめて膜越しでも、熱を分かち合うだけだ。




ツイッタで「現パロで捲簾か天蓬が風邪をひく」という素敵なネタをいただいたので書いてみたのですが、
風邪っぴきエロというありがちネタに。

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